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花粉から教育の話を考えてみる

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花粉から教育の話を考えてみる

花粉から教育の話を考えてみる

2023/03/01

はい。中田です。

時がたつのは早いもので、もう3月になりましたね。入試の結果発表までもう少しというのもありますが、この時期は花粉の飛散が本格化するので個人的には1年の中で一番好きじゃない時期です。ここからスギ花粉、ヒノキ花粉と続くので、4月の中頃まで続くイメージですね。今年は例年よりも飛散量が多いという話なので、憂鬱なことこの上ないです。

というわけで今回は昨今の教育シーンの話をします。……何がというわけかって?まあまず聞いてみてくだされ。

 

日本にはたくさんの杉林がありますが、どうしてそうなったのかを知っていますか?

実は、日本の山々に大量のスギの森林が生まれた背景には、戦後の農林省(現農林水産省)の植林政策が影響しています。日本の国土の約7割は森林と言われておりそのうち6割が天然林、4割が人工林といわれています。現在の人工林の大半はスギやヒノキといった針葉樹が占め、戦中戦後の混乱期の建設資材や燃料の不足を補うため、広葉樹を伐採して植林されました。

第二次世界大戦によって荒廃した森林の復活は、単に木材を調達するだけでなく、平野部での雨水の調整や、河川への養分の補給という意味でも大きな課題でした。農林省は手早く森林を復活させるために、生育が早くて手間のかからないスギを各地に植林していったのです。

1957年には国有林生産力増強計画をたてて、建材用として天然林を伐採し、スギを中心とした樹種への転換を図りました。70年代の高度経済成長時代に盛んになった住宅建設は、国有林に戦前から植えられていた良質の天然木が材料となり、その成長の下支えをしてきたのです。

ところが時代は下って90年代。円高での外国材の輸入増加や建築工法の新しい変化によって、国産材は需要の減で価格も低迷し、林業は産業として成り立たなくなります。石油危機以降は景気も下がりましたから経済の原理によって森林の育成は後回しとなり、伐っても売れない、売れても安い、そのため山は放置され荒廃していくことになってしまったのです。

 

これ、おそらく当時の人は全く予想できなかった未来だったんじゃないかと思います。

あるいはごく少数は「そういう未来もあり得る」と考える人も居たのかもしれません。しかしそれはあくまでも低い確率で起きるレアケースの積み重ねが招く結果でしかなく、当時の人のほとんどはそこに疑問を持たなかったのではないかと思います。

 

さて。みなさんは「ゆとり教育」という言葉を聞いたことがありますか。

ゆとり教育という考えが発生したのは1972年、また日本政府によって方針が打ち出されたのは2002年施行の学習指導要領でした。それまでの教育はいかによい大学に入る学力をつけるかに重点が置かれるいわゆる「詰め込み教育」だったのに対し、ゆとり教育は「自ら考える力をつけること。勉強に追われるのではなく、ゆとりのある時間の中で様々な経験をして生きる力を身につけてほしい」という願いから始まります。この教育を受けた世代は「ゆとり世代」ともいわれていますね。

具体的には、次のようなことが変更されています。
・土曜休みの週休5日制

・授業時間の単純減少
・総合的学習(教科にしばられない授業)の時間が増加
・円周率は3.14を使うが、およその数で使う場合は3とする
・台形の面積公式は使わず、三角形を使って解く
・中学英語の学習単語数を100減らして900とする

・成績の評価方法の変更(相対評価から絶対評価へ。また内申点の重視)

 

ところがです。学習内容の削減を始めた1972年以降。そして2002年以降ではさらに急速に、日本の学力低下が顕著にデータで出てきました。特に2000年以降に行われるようになった国際学習到達度調査では回を増すごとに順位を下げていくことになったのです。

そこであわてて文科省はゆとり教育のメリットとデメリットをまとめてみることにしました。その内容を要約すると、大体こんな感じになります。

 

◎メリット
・休みが増えて習い事など好きなことに時間が使える
・基本的な学習に集中できる
・ゆっくり考える時間ができる

◎デメリット
・遊ぶ時間が増えるだけで、時間を有効に使えるとは限らない
・暗記など学習能力を磨く機会が少なくなる
・管理能力を鍛えにくい

・日本の国際競争力は下がる

・塾に行くこといかない子で学力格差は拡大する

・結局、競争の原理で塾に行くから勉強の時間は減らない

・個性が重視されるから勉強ができないのも個性という自己満足が増える

・総合的な学習の時間に対応できる教師が少ない、あるいは腕に差があった

・受験に関係しない勉強を避けるようになり「常識・教養」を学ぶ機会が減った

 

おい、デメリット多すぎるじゃろう……しかも大問題なのが多すぎるじゃろう……

たまに「日本の景気が上がらないのはなぜなのでしょう!」と生徒が言ってきたりしますが、社会の先生ジョークとして皮肉を込めて言わせてもらうなら「この国には自国の国際競争力を積極的に下げていた時期があるからじゃよ」という笑うに笑えない事情があるのですね。

 

これ、別に当時の人がこの国を悪くしたくてそうした政策をとったわけじゃないんですよね。

……そうだと思うのですけどね。でも昨今の理系偏重による国語力低下を現場で体感している身としては、同じ失敗をしようとしてないかと問いたくはあるけど

ゆとり教育はゆとり教育で良い面はあるし、確かにそれ以前の詰め込み教育の問題点はたくさんあったわけだし、時代の流れから見ても必然だったのかもしれません。もちろんデメリットを全て事前に予測できるならそれに越したことはありませんが、それも無理でしょう。

だからこそ、

 

花粉も、ゆとり教育も、ゆとり教育後の現在起きている教育の問題も、

そこに実際「在る」以上は仕方ないんだ。上手くやってうまく乗り切っていくしかないんだ。

と思わずにはいられません。最良は常に変化する、ということですね。

そして、だからこそ(2回目)

 

出来ることなら、保護者の方にも「現在の教育シーン」というものに興味を持っていただき、知ってもらいたいと慧文塾は考えています。

30年前といえば90年代。まだゆとり教育は始まったばかりの頃でした。

20年前は2000年代。ゆとり教育が本格始動した頃ですね。

10年前にはゆとり教育の問題が浮き彫りになった頃でしょうか。

教育シーンは刻一刻と移り変わっています。これからも、慧文塾はその変化とその影響による現在の教育シーンを基に、みなさまに最良の学習をお届けしていきたいと考えております。

 

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