たくさん勉強すれば成績は上がる、の落とし穴
2023/06/14
はい。中田です。
近頃梅雨入りをしまして湿度と気温がグッと上がった気がします。埼玉に引っ越して来てからこの時期になると毎年思うことではあるのですが、埼玉って梅雨時から夏ぐらいまではわりと夜から朝方にかけて雨が降っていることが多いんですよね。自分が今まで住んでいた地域にはあまりなかった特色なので、こういう地域差が感じられるのは結構面白いです。平均降水量や年間の気温推移は日本中どの地域でも頭に入ってはいるのですが、こうした昼夜間の差などは実際にその地域に住んでみないと分かりませんものね。面白いです。
さて。前回に数学に関しての話をしまして、その際私は最後のあたりで『数学は5科目の中で一番「勉強しなさい」と相性が悪い科目です』と言いました。しかし、
勉強しなさい。なんだかんだ言っても、結局これは誰かが言わないといけないんですよねー。みんながみんな数学を好きなわけじゃないですから、出来ることならやりたくない。やる気を出すのも一苦労なわけでして、それを「勉強しなさい」という人が居なかったとしたら、当然これ幸いにとサボる子が増えるのは自明の理ですね。
じゃあどうやったらモチベーションって上がるんでしょうか?
高校入試でも大学入試でも、勉強においてはおそらくこれが最大の課題になるかと思います。
これは過去の記事でも言っていることですが、理解して分かるようになると、やがて少しずつ問題が解けるようになるから、それが嬉しくて(あるいは他の人に褒めてほしくて)自発的に頑張るようになる。と私は思っています。だからこそ、理解をないがしろにした状態で問題に挑むのは危険だよ、というのが前回の話の趣旨でした。なので今回はその続きの話から。
ところで。
どうしてスポーツやゲームの世界からは徐々に根性論が淘汰されていっているのに、いまだに勉強の世界には謎の根性論がはびこっているんでしょうか。……いや、根性論も最後の最後で粘り勝つメンタルを養うという意味では完全になくなってもらっても困るのですが、それでも
科学的に上達する道筋が研究・解明されつつあるスポーツやゲームの世界に比べるといささか進歩の速度が遅いような気はするんですよね。あくまで個人的な感想ですが。もちろん、まだまだスポーツやゲームの世界にもけっこう根性論が根深く残っていたりもしますから、実際は塾の先生である自分には見えていないだけなのかもしれませんが。しかしそれでも
勉強とスポーツとゲームって全部同じではなかろうか。と私は思うわけです。
以前にも言ったことをもう一度言いますね。
だって数学ってポケモンだぜ?
Q、ポケモンで友達に対戦で勝てるようになるにはどうしたらいいですか
A、100回対戦すれば勝てるようになる
……ホントですか?本当にそう思います?
知識と経験と洞察が全く同格の相手なら、理論上では勝率50%になるでしょうが、実際にはそうはいかないことが多いですし、やったことがある人ならわかると思いますがもしも格上が相手だったら勝率は驚くほど下がると思います。正直なところ、私だったらそんな人を相手に100戦もして経験を積むとかまっぴらごめんなんですが。また、大のゲーム好きの私でもモチベーションが下がって投げ出すと思うのに、たいしてゲームが好きでもない子に当然のようにそれをやれって言われて、その子はどんな気持ちで100戦するんでしょうか。
そして、さらに厄介なのが、外野です。
例えば、初心者の自分がゲームしている横で、上級者が「あーあ」「違うんだよなあ」「そうじゃないんだよなあ」「ほら、また間違えた」とか何かあるごとに言ってきたら、皆さんならどう思うでしょう。私ならうんざりしますね。その上級者が嫌いになるかもしれません。それからついでにそのゲームも嫌いになりますね。
……いや、実をいうと私の親がそうだったんですけどね……けっこうキツいんですよ、アレ。
じゃあ逆にどうしたらゲームって面白く感じるかというと。『自分の成長が実感できた時』が一番面白く感じられる瞬間なんじゃないかと私は思っています。要するに、今までできなかったことが出来るようになったと感じられた時、ですね。さらに言えば、そこに特別感があるとなお良いです。これも言い換えると、他人にはできないことが自分だけできると確信した時、ですね。そしてこの2つはゲームに限った話ではなく、勉強でもスポーツでも同様に発生する面白いと感じる要因なのではないかと私は思うんです。
というわけで、これを基にして見てみると、例えば
先生「なにい?1次方程式が分からないぃ?だったらプリントを10枚解いて身に付けろ!」
→100戦耐久プレイして勝ち方を身体で覚えろ。と同じやり方→モチベーションの低下
という流れが容易に想像できますね。そこでそうならないようにこの生徒にどう向き合うのがいいのかを上記の話から私なりに考えてみますと、まず
(1次方程式ができない理由は何だろう)と考えて、その後に
(小学生でやったことが理解しきれていないのかな。それとも1次方程式の解き方そのものが分からないのかな)と絞り込みます。ちなみにここを間違うと致命的なことになりますから、プロとしてここは絶対に間違えたくないですね。
そうしたら、次に
①小学生でやったことが理解しきれていない場合
→小学生の教科書・参考書を読む
②1次方程式の解き方そのものが分からない
→中1の教科書・参考書を読む
つまり、どちらの場合でも適切な【理解】をここで入れます。
この際に、一人では理解が出来ない子も居ますし、今回は1次方程式の例を出してはいますが単元によっては難しい単元もありますから、ここで『先生の説明・授業』をすることにより、【理解】が中途半端にならないようしっかり補完します。
そしてそこまでができたら
まずはめっちゃ簡単な問題を解かせる
……これでしょう。なんでいきなりワークとか宿題とかやらせるんですか。
今まではできなかったことが出来るようになったと感じることが大切なのですから、いきなり難しい問題を解くのは場合によってはリスクがあります。もしそれでも出来なかったとしたら「自分にはできないや」と諦めてしまう原因になるかもしれません。
注、「そんなこたあない。いいから黙ってやってみれ!」という根性論で乗り切れるケースもけっこうあるので、子どもたちを信じられるなら根性論で乗り切るのも実はアリですが。
ともかく。それでようやく【理解】が完了するわけで、それからワークや宿題など【練習】に取り組んで、精度を上げていけばいいのです。そして、それによって他の子よりちょっとでもできると実感できるようになれたなら、その瞬間が他人にはできないことが自分だけできると確信した時です。大いに褒めてあげます。
……ほら、こうしてみるとスポーツもゲームも勉強も、そして仕事ですらも、最初に上達していくための道筋ってたいして変わらなくないですか?
勝ち方を学び、勝ち方を理解して、そうしたらそれを実行できるよう練習して、そして勝ち、
まずは楽しいと思える経験を最初に持つ。勝負・対戦など全力での激突の楽しさを味わって、それから解ける快感を味わって、また勝ちたいと思うようになる。
ゲームと同じで、上記の芽生えを起こした子は自分で試行錯誤しながら工夫と修練を重ねて、『出来ないことが出来るようになる喜び』もしくは『対戦相手・クラスメートに勝つこと』にやがて没頭し始めます。そこは子どもたちの性格ですからどちらが良いとかはありませんが、『勉強が得意な子』がこのどちらかの性格であることが多いのは、そうなる過程として上記のようなプロセスを経ているケースが多いからですね。
逆に言うと、上記のプロセスを経ることなく、特に勉強に対する思いもなく、成長の実感とか勝ちたいとかそういう意識を持たず、モチベーションに左右されることなくたくさんの勉強をやり切って力を伸ばす子。そういう子が全く居ないわけではないですが、正直なところかなりレアケースだと思います。それがちゃんと出来るようになるのは、将来に対しての別の目標が明確化してから。最低でも高校3年生くらいからなんじゃないでしょうかね。
たしかにたくさん勉強すればそれだけ成績は上がりますが、普通の子は理由もなくたくさんの勉強をすることはできませんから、どれだけやる気を維持・向上させるかが小学生や中学生の学習においては大事だと思います。
----------------------------------------------------------------------
慧文塾
〒331-0078
住所:埼玉県さいたま市西区西大宮3-54-19 亜土ビル201号室
電話番号 :080-2392-4846
----------------------------------------------------------------------